昨今の世界的な情勢によって、私たちの働き方や共同作業の進め方は様変わりし、もはや後戻りしないことは否定できません。これまで、オフィス環境向きとされていた職務に就いている場合はなおさらです。
冷水機はなくなり、ウェブカメラが前に置かれて、新たなリモート ワークフローが導入されました。対面で作業を進めることができない場合も、各自が引き続き職責を果たし、互いにつながっています。
かつての日常が徐々に戻りつつある中、リモート ワークを継続する人もいれば、フルタイムのオフィス勤務を希望する人もいます。多くの人は、この 2 つを組み合わせる形が最も効果的であると判断しています。結果として一般的になっているのが、対面できる環境での参加者と、リモートからの参加者が会議で混在しているという状況です。
この場合の課題は、すでに多くの方が実感しているとおり、このようないわゆる「ハイブリッド会議」を参加者全員にとって利用しやすく、生産性の高いものにすることです。たとえば、対面環境の会議室にある映像音声機器は、参加者全員の話し声を適切に捉えているでしょうか。あるいは、リモートからの参加者も確実に議論に加われるよう、発言のマナーは定着しているでしょうか。
この包括的なガイドでは、すべての参加者に歓迎され、建設的な成果を得られるハイブリッド会議の運営に欠かせないツール、テクノロジー、スキルをご紹介します。
興味を持っていただけたでしょうか?それでは、まず基本的な事項から取り上げます。
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- ハイブリッド会議とは
- ハイブリッド会議の課題
- ハイブリッド会議のメリット
- ハイブリッド会議のテクノロジー
- ハイブリッド会議のソフトウェア
- ハイブリッド会議でのマナー
- ハイブリッド会議の運営に関するベスト プラクティス
- ハイブリッド会議のチェックリスト
ハイブリッド会議とは
ハイブリッド会議とは、参加者が対面して行うこれまでの会議と、電話会議のプラットフォームで開催されるリモート会議を組み合わせたものです。
ハイブリッド会議が行われるのは、通常、物理的な場所に集まれる参加者もいる一方で、集まれない参加者もいる場合です。
ハイブリッド会議が必要になり得る理由は、次のような状況があるためです。
- 柔軟なリモート ワーク ポリシーが定められていて、オフィス勤務が義務付けられていない企業
- 従業員の勤務する地域やタイム ゾーンがさまざまに異なる多国籍企業
- 組織外部や顧客との会議で、チームの 1 つが会議室に集まって、別のオフィスにいる別のチームや企業とのビジネス会議を開催する場合
ハイブリッド会議の課題:他の会議との相違点
ハイブリッド会議は、計画または進行管理が適切でなければ、すぐに破綻する恐れがあるのは言うまでもありません。会議にたびたび参加している人に話を聞いてみれば、カメラから遠くて会話が聞き取れない、ウェブカメラの映像が途切れる、参加者どうしが思わず話に割り込むことが絶えないといった体験談が、いくらでも出てくるでしょう。
ハイブリッド会議と従来の会議の大きな違いは、環境や立場の違う人への配慮、互いの近さ、効果的な意思疎通を阻む壁という点に行きつきます。これらは、課題につながることも少なくありません。
具体的な例で示すため、ある状況を思い浮かべてみましょう。月 1 回のチーム会議で、何人かは会議室にいて、何人かは自宅から参加しています。会議室のマイクはオフになっているため、会議が始まるまで、リモート ワークのメンバーには何も聞こえません。
また、会議室にはカメラがないので、対面で出席する参加者は、各自のノート パソコンから動画フィードを共有します。この映像に捉えられているのは、会議室のごく一部分の様子だけです。一方、プレッシャーをかけられている若手チーム メンバーは、急いで仕上げなければならない成果物に脇目も振らず取り組んでいて、会議のことは完全に無視しているようにも見えます。その様子は、リモート ウェブカメラの映像が捉えています。
率直に言えば、ハイブリッド会議は大混乱に陥ることもあり得るのです。ただし、必ずそうなるわけでもありません。
ハイブリッド会議のメリット
ハイブリッド会議は、効果的な形で運営すれば数々のメリットを得られる可能性があります。たとえば、次のようなものです。
- 会議の場所に集まれば生じるであろう、移動の時間、費用、二酸化炭素排出量をなくせる。
- 内向的な同僚も、各自のスペースで落ち着いて振る舞える。つまり、対面で自分がどのように受け取られるのかではなく、会議に貢献することに集中できる。
- オフィス環境への移動が難しい場合もある、アクセシビリティの面で配慮の必要な人が参加しやすくなる。
- 専門的な設備を利用する職務に就いている参加者が、会議中にリモートから参加することでそれらのツールを利用できるようになり、効果が高まる。
- 建設的なコラボレーションのための強力な環境を構築できる。
ハイブリッド会議は、時間を有効に活用できる可能性があり、これまでの会議の発展型にすらなり得ます。だとすれば、どのようにそれを実現すればよいのでしょうか。
まずは、最も重要な事項を取り上げます。テクノロジーについて整理してみましょう。
ハイブリッド会議に必要なテクノロジー
テクノロジーは、リモート会議の運営に不可欠な役割を担っています。ハイブリッド会議ソリューションが効果的なものになるかどうかは、テクノロジーしだいです。
ハイブリッド会議のテクノロジーについては、2 つの側面を考慮する必要があります。会議室のテクノロジーと自宅のテクノロジーです。
会議室のテクノロジー
ハイブリッド会議を円滑に進めるには、会議室のテクノロジーに条件があります。室内のあらゆる場所の声を捉えることができて、室内のどの場所にも音声が届くことです。
言い換えると、会議室にいる全員の様子と発言が相手に伝わらなければなりません。さらに、返ってくるすべての情報を、目と耳で捉えることができる必要があります。
この点を念頭に置くと、ハイブリッド会議用の会議室には次のテクノロジーが必要です。
- パソコン、ノート パソコン、または接続ケーブル:ビデオ会議ソフトウェアの実行元になる何らかの機材が必要です。会議専用のデバイスもありますが、より一般的なのは、HDMI などの接続ケーブルでユーザーが各自のデバイスを接続することです。
- カメラ:参加者を個別に全員捉える機能を備えたもの。カメラによっては、発言している人をズームアップできる機種もあります。
- マイク:会議室の中央に設置する場合は、無指向性のマイクであること、全員の声を捉えられる十分な集音範囲を持つものであることを確認してください。
- モニター:リモート参加者のカメラ映像を表示するためのモニターが必要です。会議室の後方からも見える、十分な大きさのものを用意してください。
- スピーカー:モニターに内蔵されているか、単体のスピーカー システムです。全員の声が届く、十分な出力範囲を持つものであることを確認してください。
- 選択肢になり得る代替策:一体型のビデオ会議システム:カメラ、マイク、スピーカーがテレビ型の筐体 1 台に組み込まれたシステムも市販されています。
リモート参加者のためのテクノロジー
ハイブリッド会議用の会議室には、スペースの全体を捉える特殊な機器が必要ですが、リモート参加者の場合は、自分の様子が捉えられ、自分の発言が伝わり、相手方が映し出されるテクノロジーがあれば済みます。
在宅の参加者が利用する必要のあるテクノロジーをまとめると、次のようになります。
- パソコンまたはノート パソコン:ビデオ会議ソフトウェアを実行し、会議にアクセスします。
- カメラ:デバイスの内蔵ウェブカメラでも、USB 接続のウェブカメラでもかまいません。
- マイク:こちらも、デバイス内蔵のものと、単体の USB 接続デバイスのどちらでもかまいません。
ハイブリッド会議で必要なソフトウェア
テクノロジーについて整理したところで、今度は、それらを利用するために必要なものがあります。ここで、ビデオ会議ソフトウェアの登場です。
ビデオ会議ソフトウェア
ビデオ会議ソフトウェアは、会議自体を運営するプラットフォームです。各参加者の音声と映像のフィードを取得して、他の参加者全員にリアルタイムで送信します。
これは、オンラインのソリューションでも、インストールして使うデスクトップ アプリケーションでもかまいません。ほとんどのソフトウェア提供元は、自社のプラットフォームについてウェブ版とデスクトップ版の両方を提供しています。
誰かに、ビデオ通話またはビデオ会議のプラットフォーム名を挙げるようお願いしてみてください。さほど経たないうちに、「Zoom 通話」という言葉が聞こえてくるはずです。実のところ、プラットフォームが何であるかにかかわらず、多くの人にとっては、この言葉そのものがビデオ会議の同義語になっています。
ビデオ会議分野の代表的な存在である Zoom のメリットは、ほとんどの人がよく知っていることです。ところで、Dropbox の戦略的パートナーである Zoom には、広範にわたる Dropbox エコシステムとの高度なインテグレーションが用意されていることをご存じでしょうか。
Zoom を Dropbox アカウントに接続すると利用できる内蔵機能としては、たとえば次のものがあります。
- リアルタイムのコラボレーション:Dropbox ファイルから直接かつ簡単に、Zoom 会議の追加、参加、開始ができます。
- 最新の状態を常に維持:Zoom 会議の録音/録画と文字起こしが自動的に Dropbox ファイル ストレージにコピーされます。
- 会議の進行中に共有されたファイルをチェック:Dropbox にあるどのファイルが Zoom に共有されたのかを把握し、Dropbox のファイル アクティビティを確認して、チームでの共同作業の進捗を完全に把握できます。
- ビジネス用ファイルを共有:Zoom 会議の進行中に、Dropbox にあるドキュメント、スライド、画像を提示し、互いの時間を最大限に活用できます。
コラボレーション ツール
ビデオ会議のプラットフォームは、ハイブリッド会議を開催するための手段を提供するものです。一方、コラボレーション ツールでは会議を活性化できます。
Dropbox に組み込まれているものなど、クラウドをベースとしたコラボレーション ツールを利用すると、会議で交わされている実りある議論を、実際の成果を生む作業セッションへと昇華できます。これは、参加者全員が同じ部屋にいるわけではない場合も同様です。
クラウド ストレージを介してリアルタイムでドキュメントを共同制作する、Dropbox Paper を使ってメモを取る、カレンダー上の会議を Paper のドキュメントにリンクするなど、できることが無限に拡がります。
ハイブリッド会議でのマナー
ここまでの手順で、必要なテクノロジーをすべて取得し、必須のソフトウェアをインストールし、コラボレーションのためのワークフローを設定しました。これで、準備は万端でしょうか。
テクノロジーという観点では、会議の運営に必要なものは揃ったのかもしれません。それでもなお、会議の成功を左右するのは参加者です。どの参加者も、成果を生み出せる会議環境を作り上げる責任を担っています。参加者が各々の役割を果たすことによって、この環境の整備を後押しできます。
この点を念頭に置いて、ここでは、いくつかのマナーに関するルールを取り上げます。セッションの前に同僚に伝えて、全員に期待される事項を明確にしてください。
- カメラをオンにする
- 話していない間はマイクをオフにする
- ビデオ会議ソフトウェアの「挙手」機能を活用する
- 何かをしながらの会話や、話への割り込みをしないようにする
- 妥当な明るさの照明を確保する
- 適切な背景を選ぶ
- 視線を常に合わせる
- しかるべき服装を選ぶ
- 遅刻しない。準備不足のまま参加しない
- 土壇場になるまでテクノロジーのテストを先送りしない
これらの多くは単純なことのように映るかもしれませんが、全員の足並みを確実に揃え、期待されている事項が何であるのかを明確にわかってもらううえで有用です。
当然のことながら、マナーだけですべて事足りるわけではありません。ハイブリッド会議が秘めている可能性を本当の意味で引き出すため、検討すべき一連のベスト プラクティス、実践習慣、思考プロセスをまとめてみました。
効果的なハイブリッド会議の運営に関するベスト プラクティス
テクノロジーを準備し、参加者には、期待される事項とマナーを手短に伝えました。これで、すべてが最大限に活かされたセッションを運営できるかどうかは主催者しだいです。
この実現を後押しするため、ハイブリッド会議の雰囲気を一変させる 6 項目のベスト プラクティスをご紹介します。カレンダーにある次回のセッションに採り入れてみてください。
1. 事前にプランを立てる(さらに、リモートの時刻を考慮してスケジュールを設定する)
会議に必要なものを考えてください。達成しようとしているのは何であり、参加すべき人は誰であり、効果的なハイブリッド会議とするには、何ができるでしょうか。
参加者について考えてください。どのような時間帯に、どの場所で職務に就いているでしょうか。ニューヨークのオフィスで午前 9 時にハイブリッド会議を開催することは、3 時間の遅れがあるカリフォルニアのチーム メンバーにとって、現実的でしょうか。
2. コラボレーションが円滑になるアジェンダを設定する
当事者の全員が取り組みに関与できるだけの時間をプランに織り込み、リモートの参加者に発言の機会を提供し、理想的には、もし妥当であれば、会議中の発言またはプレゼンテーションについて準備してもらいます。
検討すべきもう 1 つの領域は、コラボレーション ツールをアジェンダで考慮に入れられるかどうかです。会議の進行中に、共有のドキュメントで参加者が作業を進めることは可能でしょうか。また、そうすることは会議の目的にかなうでしょうか。
3. 必要なテクノロジーを全員が用意していて使っていることを確認する
必要なものをチームのメンバーがすべて用意しているかどうか、会議の前にチェックすべきなのは言うまでもありません。通常は 1 回限りのチェックであり、チーム メンバーの機材に問題が生じた場合のみ、あらためてチェックするだけで済みます。
組織外の参加者については、何を期待するのかを明確にします。ウェブカメラを使って参加すること、マイクが設定済みになっていることです。ほとんどの場合、これはあえて言うまでもない事柄ですが、場合によっては(就職面接など)事前に伝えておく必要があります。
4. 室内と動画テクノロジーの構成を調整して、積極的に関与できる雰囲気を作り上げる
室内がどのような構成になっているかを考慮してください。カメラの位置、モニター画面の位置、着席している位置はどこでしょうか。室内のレイアウトが適切に計画されたものであれば、リモートからの参加者が何人かいる場合も、参加者が積極的に関与しようとするうえで理想的な環境を築けます。
会議の着席位置ごとに、参加者が着席していると想定して、次の事項を確認します。
- その位置の声をマイクで拾えるでしょうか?
- カメラは、参加者が写る位置に設置されているでしょうか?
- その位置から、リモート参加者の様子が見えるでしょうか?
- 全員が、身体を前後左右に何度も回すことなく、互いに働きかけることができるでしょうか?
個々の着席位置について、上の質問すべてに「はい」と回答できる場合は、ハイブリッド会議のための室内環境が整っています。
5. 双方が平等に関与できるようにするための司会進行役を任命する
司会進行役、つまり会議を取り仕切る人物は、ハイブリッド会議を成功へと導く秘密兵器です。
オーケストラの指揮者と同じように、優れた司会進行役は、会議の舵取りを務め、すべての参加者の能力を最大限に引き出すことができます。多くの場合、会議の主催者が担当しますが、常にそうであるとも限りません。
司会進行役は、会議室の雰囲気を読み、対面の参加者が場を支配しはじめたと感じたら、リモートの参加者に働きかけることができなければなりません。また、会議で追求している成果やアジェンダに対して、参加者がしっかりと集中し続けられるようにする必要があります。
会議の全体的な成功について言えば、十分な説明を受けた有能な司会進行役がいることの効果は、決して軽視できません。
6. この会議が本当に必要かどうか自問する
全員の時間の無駄と感じられる会議に参加した経験は、私たちの誰もがあるはずです。
このガイドで見てきたとおり、成果を得られる会議には入念な計画が欠かせません。
これらの項目すべてを準備するのは、大変な作業量と映るかもしれません。実際にそうなる可能性もあるため、そもそも会議を開く必要があるかどうかを確認することが大切です。
場合によっては、ドキュメント内でフィードバック、チャット、コメントのシステムを使って、関係者がそれぞれのペースで意見を交わせるようにしたほうが、生産性が向上すると感じられることもあります。
その形で進めると、成果を上げることに集中するための時間を全員が得られて、共同作業に投じる時間を最大限に活用するうえでも効果的です。
ハイブリッド会議のチェックリスト
今回のガイドでは、多岐にわたる内容を取り上げました。そこで、ハイブリッド会議の開催前に自己チェックができるよう、重要な事項を簡単にまとめました。
- 会議の目的は明確で、測定可能かつ最終的な成果が設定されていますか?
- 対象となる事柄について、会議を開くことは本当に必要ですか?メール、チャット、メッセージ、ドキュメントのコメント機能や注釈機能で十分ではありませんか?
- 会議のスケジュールは、すべての参加者にとって都合のよい時間に設定しましたか?
- 利用する可能性のあるシステムやコラボレーション ツールの準備も含めて、アジェンダは、ハイブリッド会議を開くだけの意義があるものですか?
- 必要なテクノロジーとソフトウェアを全員が用意していますか?
- 会議室は、リモートと対面の参加者が議事を円滑に進行できる設定になっていますか?
- 司会進行役を置いていますか?その司会進行役は、会議を運営し、当事者全員に関与を促すための準備を十分に整えていますか?
上の質問に「はい」と回答できる場合、準備は完了です。あとは、ハイブリッド、リモート、または対面の会議を計画する際に、これらの手法の実践を習慣にするだけで済みます。
Dropbox を導入してハイブリッド会議を適切に運営する
成果を生まない会議に何度も参加した経験があれば、自分や自分の所属チームにとって、もっとふさわしいやり方があるはずというのが実感ではないでしょうか。
今こそ、ハイブリッド型の未来のワークスペース、会議、コラボレーションを採り入れるタイミングです。
ファイルから会議を始めるため、クラウド ストレージにある録音/録画や文字起こしに簡単にアクセスするため、あるいは仕掛かり中のドキュメントに関する共同作業をリアルタイムで進めるための環境が必要になった場合は、Dropbox と Zoom ですべて対応できます。