ワークフローとは?
ワークフローとは、タスクを実行するために必要な一連のイベントを大まかに並べたものです。ワークフローの各ステップは、リソースの体系的な編成を通じてビジネス プロセスを形作り、タスクを「開始前」の状態から「完了」へと導く道筋を表します。
ワークフローには、文書化しやすいものとそうでないものがあります。ワークフローは一般に、「プロセス」「プロジェクト」「ケース」の 3 種類に分類されます。
プロセス型のワークフローは、最初から最後までの全体像を描くことができます。このタイプのワークフローは、自動車製造を説明するのに最適です。タスクは予測可能で標準化されていて、イレギュラーな部分はわずかしかありません。
プロジェクト型のワークフローは、プロセス型に似ていますが、柔軟性の面でより高い自由度があります。このタイプは、画一的なアプローチではなく、カスタム メイドでソリューションを作り出していくという特徴があります。このタイプは、注文を受けて絵を描く画家にたとえることができます。プロジェクトの終了により、依頼された絵が完成することはわかっています。しかし、プロセス自体は何を描くかによってさまざまな形になります。
ケース型のワークフローは、情報収集が進むにつれて正しい行動指針が明らかになるため、リクエストの状況によってさまざまな形になります。たとえば、IT サポートのチケットや保険の請求がこのケース型ワークフローに該当します。ワークフローの開始時には、関係者が何をすべきか、またはどのような結果になるのか予測できません。
ワークフロー プロセスの要点をつかむことで全体像がよく見えるようになるため、説明責任が向上し、プロジェクトのリスクも抑えることができます。プロセスの情報を文書化することで、業務を確実に完了し、繰り返せるようになります。企業は自社の能力や許容量を正しく測定できるようになるため、ワークフローはビジネス プロセスの管理における非常に重要なツールとなります。
ワークフローの歴史
ポーランド人のエンジニア、カロル・アドミエツキ氏が考案したハーモノグラムは、ワークフロー管理システムとして最初期のものと考えられています。ハーモノグラムでは、複数の細長い紙を使って業務の流れを説明します。この紙には、プロセス内での次のタスクと前のタスクが書かれています。この縦長の紙に、付箋のような小さな紙を貼り付け、それで所要時間を計ります。1 つの付箋が 1 つの時間単位を表します。
ハーモノグラムを視覚的にイメージしてみましょう。まず、Excel の画面を想像してください。Excel の各行が、ハーモノグラムの付箋に相当し、時間の長さを表します。Excel の各列は、ワークフロー内で実施するそれぞれのタスクを表しています。1 つのプロセスで 5 つのタスクを実行する場合は 5 列必要となります。1 つのタスクに 2 時間かかると仮定して考えてみます。Excel で A 列の 1~2 行、B 列の 3~4 行、C 列の 5~6 行、D 列の 7~8 行、E 列の 9~10 行を塗りつぶします。完成したハーモノグラムを見ると、5 つのタスクをすべて終えるのに合計で 10 時間かかることがわかります。
アドミエツキ氏は、必要な作業とその所要時間を並べることで、マネージャーが合計作業時間を正確に予測できるようにしました。作業の進捗状況から、どの程度の作業が完了し、どの程度が残っているかがわかります。ここから、どれくらいの遅れがあるかも知ることができます。予想よりも遅れている場合には、その紙に色を付けて、遅れている理由を記号や文字で示すことができます。アドミエツキ氏は、プロジェクトの完了時に完成したハーモノグラムを写真に撮って、その作業工程を今後の計画に反映するようマネージャーに推奨しています。
ポーランドでのハーモノグラムの導入は早く、1896 年には使われ始め、化学プラント、金属、圧延工場、農業、鉱業の分野で 100~400 % の業績アップに貢献しました。1903 年、アドミエツキ氏はエカテリノスラフ県で行われたロシア工学会で彼の成果と事例を発表しました。しかし彼のプロセス管理法は 1931 年まで広く公表されることはなく、それまではポーランドでのみ使われていました。こうしたことから、ガント チャートがワークフローの基本的なテンプレートとして広く認識されるようになりました。
ヘンリー・ガント氏は、1910~1915 年にかけてガント チャートを開発しました。1912 年にヘルマン・シュルヒ氏によって同様のデザインが発表されていましたが、そのときには注目を集めませんでした。ガント チャートには、実行すべきタスク、各タスクの担当者、タスクを完了するための所要時間が示されます。ガント チャートが示すワークフローは、ハーモノグラムとは少しだけ異なります。タスクは縦に並べ、横のバーを使ってタスクの所要時間、マイルストーン、依存関係を示します。多くのタイムライン テンプレートがこの表示方法を採用し、今ではごく一般的となりました。
長い年月をかけ、ワークフロー管理ソフトウェアの人気は高まり、業界に特化したワークフロー ツールが広く普及するようになりました。
ワークフローの例
新入社員のオンボーディング
新入社員のオンボーディング プロセスは多くの場合、複数の段階があり、複数の部門が関わる形で行われます。法的拘束力のある署名を依頼することもあれば、ドキュメント管理について考慮する必要もあるでしょう。オンボーディング ワークフローの要素として、たとえば次のようなものが考えられます。
- ステップ 1:人事マネージャーが新入社員全員に、オンボーディング関連ドキュメントを添付した歓迎メールを送る。
- ステップ 2:新入社員がメールを読み、添付されているドキュメントを開く。
- ステップ 3:新入社員が雇用契約書に署名をして、人事部に返送する。
- ステップ 4:人事部がドキュメントを処理し、保管する。
このワークフローのステップはどれもボトルネックになる可能性がありますが、改善が見込めるものでもあります。新入社員に必要なファイルを人事マネージャーがもれなく提供できるようにするには、共有フォルダを作成して新入社員の上司を招待するのが効果的かもしれません。このフォルダに、新入社員に関連する全ファイルを入れておくことで、人事マネージャーは新入社員と個別にやり取りをする手間が省けます。また新入社員に必要なすべてのプロセスを明確に伝えるため、スクリーン キャプチャ動画を作成し、各ステップを説明しましょう。
新入社員には、パスワード保護されたリンクを介してファイルを送ることができます。また、チーム メンバーには読み取り専用のアクセス権を設定することで、ファイルのセキュリティを高めることができます。法的文書は Dropbox Sign を使って電子署名することも可能です。他にも、人事マネージャーが歓迎メールを自動で送信できるようにするツールがあります。
動画広告の制作
顧客と代理店のやり取りでは、次のようなワークフローを想定できます。
- ステップ 1:顧客企業のブランド マネージャーが、クリエイティブ ブリーフを作成して共有する。
- ステップ 2:代理店のアカウント マネージャーがそのブリーフを受け取り、依頼された動画を制作し、ブランド マネージャーに送信して内容のチェックを依頼する。
- ステップ 3:ブランド マネージャーが関係者に動画を共有し、フィードバックを集める。
- ステップ 4:アカウント マネージャーが、フィードバックを踏まえて修正を加え、最終版のファイルを納品する。
このプロジェクト ワークフローでの主な作業は、長い動画を送信し、コンテンツを共同で作成することですが、こうした作業では問題が起こりやすいものです。このようなプロセスは特に、Dropbox を活用することでよりシームレスに進められるようになります。Dropbox では、大容量ファイルを圧縮せずに手早く送信することが可能です。ユーザーは動画の特定の位置に、タイムコード付きのコメントを残すことができます。正確かつ明確なフィードバックができるようになるので、最終成果物の品質向上も期待できます。
アドホックなプロジェクト管理
クライアントと共同で仕事を進める場合には、当初の予定にはなかった作業が必要になることや、新しいタスクが追加で依頼されることがあります。こうした事態に備えて最適なワークフローをあらかじめ作っておくことは不可能ですが、予定外のリクエストに対応できるようにする手順は数多くあります。
実績のあるドキュメント管理手法では、臨時のリクエストが発生した場合に備えて、納品物を保存する場所に関係者が事前にアクセスできるようにしておくことができます。Dropbox を使用して成果物を保存しておくと、ファイルに変更があった場合は自動で同期が行われます。そのため、最新バージョンに手動で差し替えておく必要がなくなります。
Dropbox Paper で議事録を書いていれば、追加リクエストのタスク管理も簡単です。リクエストにプロジェクト マネージャーをタグ付けして、期限を提案するだけで完了です。Paper からは自動でリマインダーも送信されるので、全員の作業を予定どおりに進めていくことができます。
プロセス マッピング ワークフロー
自社のワークフロー ダイアグラムを作成する際には、代表的なプロセスを正確に書き出すことが重要です。このときに、レア ケースや例外的な事態については無視してください。チーム メンバーが関与するプロセスでは、プロセスを実行する担当者から意見を聞くことがベストなアプローチです。担当者の意見は非常に貴重です。
マッピングが最も簡単なのはプロセス型のワークフローかもしれませんが、ケース型やプロジェクト型のワークフローについてもマッピングを行ってください。ケース型やプロジェクト型の場合、最も一般的に実施されているワークフローを作成してみてください。プロセスの最適化によるメリットが最も感じられるのがこうした部分だからです。
はじめてのワークフローが完璧なプロセスにならなくても、気にすることはありません。ワークフロー作りの目的は、改善の余地がある部分を特定することであり、ワークフローを作り直すたびに前回より良いものにしていけばよいのです。プロセスを記録するのは最初のステップですが、非常に重要な作業です。このプロセスに終わりが訪れることはないでしょう。ワークフローに関連するソフトウェアやテクノロジー全般が新たに開発されていくことで、改善の機会が新たに生まれていくはずです。
Dropbox のインテグレーションは現在も増え続けており、ワークフローの改善方法は数え切れないほどたくさんあります。たとえば、1 つの統合フォルダで複数のプログラムからファイルの閲覧が可能になるなど、わずかな機能強化によって作業効率を大幅に改善できるのです。1 人でプロジェクトに取り組んでいる場合でも、国際的なチームの一員として作業をしている場合でも、プロセスに Dropbox を取り込むことこそが、業務改善の道となります。