OKR とは
もしあなたやあなたのチームが目標設定や To-do リストなどの手法を用いているなら、OKR もあなたの興味を引くかもしれません。OKR は、元インテル CEO のアンディ・グローブ氏が開発した目標管理のためのフレームワークで、目標を設定し、評価するための手法を定めています。OKR は「Objectives and Key Results」の略称で、「目標」と、その目標を達成するためのステップとなる「主要な結果」を表しています。目標はあなたが達成したいと考えていることであり、主要な結果は目標達成のためにすべきことです。
OKR の歴史
グローブ氏が着想した OKR は、現代経営学の父と言われ、「MBO(目標管理制度)」を開発したピーター・ドラッカー氏の著作が元になっています。OKR を一般に広めたのは、やはりインテルの元社員でベンチャー キャピタリストのジョン・ドーア氏で、OKR という名称もグローブ氏の講演を聞いた同氏が考案したものです。
ドーア氏はインテルを退職後、当時小さなスタートアップ企業に過ぎなかった Google に OKR フレームワークを取り入れます。OKR は、同社が後に世界で最も成功した企業の 1 社に成長するうえで大きな役割を果たしました。それを裏付けるように、Google 以降、飛躍的な成長を果たした多くの企業が OKR を採用しています。その後ドーア氏は著書「Measure What Matters(邦題:Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ)伝説のベンチャー投資家が Google に教えた成功手法 OKR)」を執筆しますが、ここには同フレームワークの威力が詳しく書かれています。
OKR と MBO の違い
OKR は MBO から生まれたとは言え、両者には次のような違いがあり、OKR がチームに与える影響は MBO とはまったく異なる場合があります。
- 確認のタイミングは OKR は四半期ごと、MBO は 1 年ごと
- MBO の目標は個人のもの、OKR の目標はチーム全体のもの
- OKR は常に金額やパーセントなどの数値で測定されるが、MBO のスコアはそうとは限らない
- MBO は報酬に直接影響するが、OKR はそうではない
多くの人は、職場の年次勤務評定や重要業績評価指標(KPI)で MBO のシナリオを経験していることと思います。MBO では年度初めに目標を設定し、自分とマネージャーの間だけで共有します。あなたは目標を達成するために懸命に働き、その達成度に応じて一定の報酬を受け取ります。
OKR では、個人や個人の目標に焦点を当てるのをやめ、チーム全体に目を向けて、測定可能な結果を生み出すプロジェクト目標を策定します。現代のビジネス環境では、MBO を導入してもすぐに時代遅れだと見なされ、場合によっては社員のモチベーションを低下させるとまで言われてしまうでしょう。普段から、「個人の強さはチームの強さで決まる」とチームの重要性を訴えておきながら、「ただしボーナス シーズンは別」というような態度を取れば、企業文化にも悪影響が及ぶかもしれません。
OKR は、このチーム志向のアプローチに基づき、シニア レベルの経営幹部の結果をジュニア レベルの社員の結果に結び付けるカスケード型の経営を実現するためのトップダウン構造を採用しています。
OKR の例
ドーア氏は、OKR の例をいくつか挙げています。トップダウン目標の例には、サッカー チームの OKR シナリオを使っています。
目標:ワールド カップで優勝する
- 主要な結果 1:トーナメントを通じた 1 試合平均得点数 2.0
- 主要な結果 2:トーナメントを通じた 1 試合平均失点数 0.5
- 主要な結果 3:ボール支配率 75 %
この最高レベルの目標に基づき、オフェンス コーチは自身の OKR に上記の OKR を反映させる必要があります。
目標:1 試合あたり 700 メートルのパス攻撃を実施する
- 主要な結果 1:パス成功率 85 %
- 主要な結果 2:枠内シュート率 80 %
- 主要な結果 3:ペナルティ キック成功率 100 %
もちろん、スポーツの試合に限らず、人生の何らかの場面において、100 % 成功すると保証できるわけはありません。ここで大切なのは、結果の達成に強く固執することではなく、どのような結果が求められているのかを明確に理解することです。チームの目標が明確であれば、メンバー全員が同じ方向に向かって努力し、お互いに刺激を与え合うことができます。結局のところ、何をすべきかわからない、方法が明確でないということが、ストレス、先送り、チーム全体に漂う不満感といった問題を引き起こすのです。
興味深いことに、OKR は仕事以外の場面にも応用できます。個人的な目標を達成するという用途にもぴったりなのです。実際、ドーア氏は次のような目標の達成に OKR を利用しています。
目標:家族と充実した時間を過ごす
- 主要な結果 1:午後 6 時までに帰宅して家族と一緒に夕食をとる
- 主要な結果 2:インターネット接続を遮断して邪魔が入らないようにする
野心的 OKR とは
すべての OKR が「コミットする OKR」である必要はありません。コミットする OKR とは、あなたやあなたのチーム、あるいは会社が達成に向けて努力すると合意した OKR のことを言います。一部の OKR は野心的な内容であってもかまいません。このタイプの目標は「ストレッチ目標」、「ムーンショット目標」(「月へのロケット打ち上げのように達成困難な目標」の意)とも呼ばれ、実現性が高いという意味で現実的な内容である必要はなく、自分自身やチームを鼓舞することを意図しています。
Google 創設者の 1 人ラリー・ペイジ氏が「クレイジーで野心的な目標を立てよう。目標達成に失敗したとしても、何かしら得るものがあるから」と述べているように、この種の目標を達成できなくても、自分を落伍者だと決め付ける必要はありません。それよりも、自分の能力を高める機会だと捉えましょう。容易に達成できる目標は、達成できたとしても得られるものは決して多くありません。
同じようなテーマに対し、コミットする OKR と野心的 OKR の両方を設定すると、必要不可欠なタスクを実行しつつ、常により大きな目標を追求できます。次に例を示します。
目標:フリーランサーとして成功する
- 主要な結果 1:1 月中にリサーチを済ませ、ウェブサイトを立ち上げる
- 主要な結果 2:5 月までに 10 社以上の顧客基盤を確立する
- 主要な結果 3:6 月までに現在の収益を 10 % 増やす
これを野心的な目標に変えると、次のような OKR を設定できます。
目標:「ニューヨーク フリーランサー」という Google 検索のキーワードでランキング 1 位になる
- 主要な結果 1:キーワードのリサーチと最適化に取り組む
- 主要な結果 2:SEO 対策に習熟し、対象を拡大する
- 主要な結果 3:今月末までに Google 検索の 1 ページ目に表示されるようになる
ゼロから取り組みを始めた場合、数週間程度で Google 検索の 1 ページ目に表示されるようになるのは難しいでしょう。たとえ、専門家のチームが一丸となって協力してくれたとしてもです。そもそも Google 検索は、こうした取り組みの成果が必ず反映されるようにはなっていません。ここで大切なのは、目標が現実的かどうかに関係なく、目標を達成するための方法を理解することです。方法が正しければ、目標達成に向けたすべてのステップが、新しい知識を獲得し、理解を深め、目標に少しでも近づくために必要なツールを入手することにつながります。
チームワークが夢の実現を可能にする
OKR を導入するのなら、チーム メンバーにも、あなたと同じくらい本気で取り組んでもらう必要があります。OKR は、チームの個々のメンバーのための時間管理ツールなどではなく、企業戦略として見るべきものです。OKR を支援するツールとして Dropbox Paper を使うと、メンバー全員がアクセスできる 1 つのドキュメントに To-do リストを作成し、タスク管理を実施できます。すべてのメンバーが、経営トップだけに関係する目標ではなく、社員全員にとっての目標を把握できるので、目標は個人の課題ではなく、会社全体としての取り組みであるという意識を全員に浸透させることができます。
Dropbox は、ファイルの紛失やバージョン違いといった問題を解消し、すべてを 1 か所に集約します。このため、管理の手間や集中力の妨げ、モチベーションをむしばむストレスを減らすことができます。適切な生産性向上ツールを用意し、円滑なコラボレーションを実現することは、チーム一丸となって共通の目標に取り組むために欠かせません。Dropbox を活用すれば、メンバー全員をこの取り組みの当事者とすることができます。